最近、先生すっごい忙しくて、なかなか2人になる機会がなくって… それに、先生は大人だから、あんまり愛情表現を言葉でしてくれない… 僕、なんだか最近不安だよ… そんな時、たまたま図書室で自習があって、普段は読まない本を開いてみた。 気付いたら読みいっていて、自習の時間が終っちゃってて… なんだかどうしても最後まで読みたくて、しかたないから、借りてみることにした。 「せ〜んせっ!」 「おや、葉月くん…なんだか久しぶりですね」 「先生最近出張多すぎ〜!僕、ちーちゃんもこーちゃんも遊んでくれなくって、すっごい寂しかったんだよ!」 「それはそれは…本当に申し訳ないことを…」 先生が本当に顔を歪ませて、申し訳ないって顔をしたから、僕、もうどうでもいいやってなって、先生に向かって、想いっきり笑顔を向けてあげる。 そして、近付いて、先生の座っている隣のイスに座って、一冊の本を目の前に突き出す。 「先生、本当に悪いと思ってる?」 「思ってますよ?」 「それなら、これ読んで!」 「え?」 「ただ読むだけじゃダメだよ〜、ちゃんと音読して」 「音読…ですか…」 先生は僕から本を受け取ると、少し目を細める。 「これって、思いっきり恋愛小説じゃないですか…」 「そう!なんか適当に手にとって読んでみたら、結構おもしろかったんだ〜」 「それで、何故音読させようと思ったんですか?」 「ん〜、なんとなく?」 先生は少し困った顔になって、一度小さく溜息をついた。 僕は聞えないふりをして、ニコニコと笑っている。 「これ、今じゃないとダメですか?」 「え?別に、後でもいいよ?」 「じゃぁ…今夜、僕の部屋でってことで…」 「うん、分かった!」 そう言って、まだ昼休み中の僕は、とりあえず教室に戻ることにした。 夕食も食べ終わって、後は明日も休みだし、夜更かしでもするかな〜なんて思いながら、約束だった先生の部屋へと向かう。 ドアをトントンってノックすると、先生がすぐに開けて、中に入れてくれた。 先生の部屋はモノがあんまりなくって、いっつもキレイに片付いている。 そんな先生の部屋のリビングには、そんなに大きくない机と、さぶとんが2枚。 僕はその片方に座るように言われて、言われるままに座った。 ちょっとして、先生がマグカップを2つ持ってきて、僕の方に1つと自分の方に1つ置いて、僕と反対側に座った。 「どうぞ、ここまでくるの、寒かったでしょ?」 「あ、ありがとうっ!」 そっとマグカップを両手で包み、ゆっくりと一口飲んでみる。 それは暖かいココアで、なんだかすっごく落ち着いた。 「ところで、なんで俺にあの小説を読ませようとしたんですか?」 「ん?」 「理由があるんでしょ、じゃないと、いきなりあんなの読んでなんて言わないはず…」 「別に、理由なんてないよ〜!」 理由がないわけない… でも言えない… 先生に、「好き」って言って欲しいから、「好き」って言葉が書いてある本を探したなんて… でも、今考えたら、先生はそういうとこ割り切って読むんだろうし… 結局、僕がむなしいだけなのかもなぁ… 「でも、もういいや…!」 「どうして?」 「もう、眠くなっちゃたし…それに、先生も出張帰りで疲れてるから…」 もう、いいや… どうせ、先生の気持ち分からなくても… むなしくなるよりは、ましだよね… 「ってことだから、ココア飲んだら、帰るね?」 「葉月くん…キミは、なんでも溜め込みすぎなんじゃないですか?」 「え…?」 「言いたいことがあるなら、言って欲しいことがあるなら…なんでも言ってください…僕の前でだけは、わがままでいてください」 「…でも」 「葉月くんは、自分を押さえ込むのが上手すぎます、もっと、他人を求めてもいいんですよ?」 …他人を求める…それって、何? 自分を押さえ込む…そんなつもり、まったくない… ただ、人に迷惑をかけることだけは、したくない… こんな考えは、いけないこと? 「僕は…」 「葉月くん、好きですよ…」 「…え…?」 「出張に行ってる間、ずっと葉月くんのことを考えてました」 「あ、えっと…」 「どうですか、自分の言って欲しいことを言ってもらえた気分は?」 「え…!?」 何、僕の考えてたこと、全部ばれてたの!? でも、なんだか今まで味わったことのない喜びが湧き上がってくる…。 自然と顔が、にやけちゃう… 「やっぱり葉月くんはカワイイですね…俺は、あんまりこうやって口に出すこともないし、ましてや行動に出すことなんてもっと少ないです…でも、別に葉月くんが嫌いになったとかじゃなくて、性格とか、葉月くんを気遣う気持ちとか…そういうのがいろいろ混じって、今の状態におさまってるんです」 「先生…」 「キミは、今までもこれからも、ずっと、俺の一番だから…例え、離れていても、ね…」 「…うん!僕も、先生が一番大好きだよっ!」 机の反対側までまわって、先生におもいっきり抱きつく。 先生は、優しく僕の頭を撫でてくれた。 その後、好きだの愛してるだの、キミが一番だの…いろいろ恥ずかしいことを耳元で低めの声で囁かれて… どうしようも逃げ場がなくって、すっごい恥ずかしかったけど… でも、これって幸せってことだよね―――。 |