* お前だけの執事さん *






長かった夏休みも終わりいよいよ一年の半分にさしかかったこの時期俺たちの高校は一番忙しくなる。
ナゼかって聞かれると理由は文化祭モードに入るからだ。

俺たちの高校は近隣の高校の中でもある意味有名だ…毎年女子の参加率がとてつもなく多いらしい。

そんな中で俺たちのクラスは自分たちのルックスを生かしてなのか《執事喫茶》をすることに決まった。

「綾斗〜終わったか?」
「まだ、あれだったら陽介先に行ってて―」
「いや、待つよ」

今は綾斗が執事喫茶の衣装に着替えているのを廊下で待っている。

俺も執事役なのだがすでに着替え終わっているからあとは綾斗を待つだけだ。

「待たせたな」
「いや、綾斗のためなら何時間でも待つし」

俺のさらっといった台詞に綾斗は慣れない服を着ているせいもありすぐに真っ赤になった。

「…///(陽介ってさらっとこういうこと言うんだよな)」

俺は真っ赤になってわざと視線を合わせないように斜め下を見ていた綾斗の頭に手をおいた。

「うん。やっぱり似合うな」
「全然似合わないし」
「俺が似合うって言ってるから似合うんだよ」

俺は愛しい恋人のさらさらの髪をくしゃくしゃにした。

綾斗の可愛い執事姿を見れたことだけでも嬉しい。
さらに執事役の中でのグループも一緒だからなおさら嬉しい。
文化祭は楽しいからもとから好きだけど好きなやつと一緒の文化祭はもっと楽しくてついはしゃいでしまう俺がいる。

綾斗は「ったく」とため息をつきながらも顔を赤らめて俺がくしゃくしゃにした髪を整えていた。

「なぁ綾斗?休憩になったら一緒に回るか?」
「当たり前だ!なんのために一緒のグループになったんだよ」
「そうだよな♪なんか綾斗からそんなこと言われるの嬉しいな」

俺はあえて当たり前の質問をしてみた、綾斗の返事がある程度わかっていたから。
でも直接本人から言われるとさらに嬉しくなる。

更衣室から外に出ると俺たちは自分のクラスの出展場所に向かった。

『なんか女子が多いよな』とかおもいつつも女子の視線が綾斗の執事姿に向けられていると思い込んでしまう。

実際には自分にも向けられていたなんて気付くはずもない。
綾斗は視線を気にしてなのか目線をしたにしながら歩いている。

「綾斗、大丈夫だ俺がついてる」

俺は綾斗に聞こえるか聞こえないかの声で言った。

無事に出店場所につくと綾斗と俺はいきなりお客さんからの指名だ。

綾斗は「めんどくさい…」とかいいつつもお客の前にいくと執事モードにスイッチが入っていた。

「お待たせいたしました、お嬢様」

指名したお客のところへ行き軽く挨拶をする。
もちろん女子だ見たところとなり町の女子大生みたいだ。

女子大生はメニューをみながら俺に注文をした。

「かしこまりました」

俺が席を離れようとしたその時女子大生は「ちょっと待って!」と俺の服のすそをつかみひき止めた。

俺は綾斗のところに早く行きたいと思いながらも執事モードに切り替え。

「はい?お嬢様何でしょうか?」

俺はめいっぱいの持ち前スマイルで言った。

「あの…これ!!」

女子大生の一人が俺に一枚の紙を渡してきた。
俺の勘だとこれはケー番かアドレスだな。

俺は特大のスマイルで「申し訳ありません…執事がこのようなものを受け取るわけには参りませんので」と言うと踵をかえし綾斗のもとに戻ろうとした。

「ちょっと!待ちなさいよ!女の子泣かせるなんて酷くない!?」

女子大生のとりまきが俺の服の裾をつかみ俺をひき止めた。
正直しつこい。

「ただいま勤務中ですので」

俺は早く彼女らから離れようとお辞儀をしたが離してくれない カウンターから綾斗が俺を呼んでいる。
仕方なかったからアドレスらしき紙を受け取り離してもらった。
最初に紙を渡してきた女子大生は俺が離れる瞬間に『メール待ってます』と言ってた。

それに対してニコリと笑うと俺は綾斗めがけて走った。

「あ綾斗、すまん」

カウンターへ行くと綾斗が腕を組んでそっぽを向いていた。

「ずいぶん仲良さそうにしてたな」
「ははは、あれが仲良く見えるか?」
「俺にはそう見えた、しかもなんか受け取っただろ」
「ん?あ〜これか?アドレスみたいなんだけど…送ってみようかな(笑)」
「!?ー貸して」

綾斗は一瞬驚いたような顔をしとたんに少しムスっとして俺からさっき受け取った紙を奪い取った。

ビリッ

綾斗は紙を開くどころか見もせずにそれを破いてしまった。

「あ…」

つい驚きの声を出してしまった。

「送る必要ない!何か文句でもあるのか?」
「いや、別にないけど」

ちらとさっきの女の子達の方に顔を向けて見ると破かれたアドレスの書いてある紙に気づいてないのか他の執事役のクラスメートが持ってきていたケーキを満足そうに食べていた。

―――と急に頬に暖かいものが触れかと思うと視界が変わり目の前には綾斗の整った顔があった。

「なに見てるんだよ」

綾斗の不機嫌はMAXになりかけていた。
綾斗の綺麗な目をじっと見ていると綾斗の顔がだんだん赤くなってきた。

「あ、あんまりガン見すんな」
「自分でそうしたんだろ?(ニコ)」
「う、うっさい!///」

綾斗は自分で俺と目を合わせてきたくせにすごく照れている

「ぷっ、可愛いな」
「ん?なんか言ったか」
「別に〜♪」
「むっ!なんだよ///」

恥ずかしさが限界に達したのか綾斗は俺から目をそらし

「陽介は俺から見てもカッコいいんだからあんまり女の子に必要以上に笑顔を振りまくな」

と言うと頬から手を離し厨房にいたクラスメートのとこにいってしまった

「綾斗…あの顔は反則だ…」

俺は綾斗の手が触れていた自分の頬にそっと手を触れた―――


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