帰りのHRが終わった後「やっと1日が終わった」と一息ついた時に前のドアからあまり見覚えのない先生がやって来て雅夜を連れて行った。 今まで何か仕事があるなら話してくれたのに、今回雅夜は何も言ってくれなかった。 その後保健室に行って仕事をしていた、というよりずっと話していた。 綾斗がずっと智夜に話しかけていたが智夜はずっと相づちだけうって、かるく上の空状態だった。 「(雅夜が僕に隠し事。そんな事ないよね、唯単に言い忘れてただけだよね。でも今まで些細な事でも言ってたのに…)」 「…や、智夜!!」 「……わっ!ビックリした、ど、どうしたの綾斗君?」 「窓の外」 真顔で綾斗はそう一言告げると智夜の後ろにある窓をずっと見ていた。 何を見ているのか気になった智夜は振り返ってみると、雅夜と先程教室にやってきた先生が2人で歩いて並んでいた。 先生は笑顔で何か話していて、雅夜もそれほど嫌な顔はしていなく多少笑っていた。 その光景を見て何も言葉が出なかった。 必死に何かを言おうと、話を変えようとしたが二人の顔が頭の中でグルグルと周り続けていた。 「あ、あの僕、その、トイレに行ってくる」 思いっきり椅子を引いた後、無理矢理笑顔にして保健室から出て行った。 綾斗が何か言っていたような気がしたが、何故だか胸が痛く、イライラしていたためそのまま急いで外に出た。 その後ふらふらと歩いていると、偶然に目の前を雅夜と先生が二人並んで歩いていた。 雅夜は智夜に気づくなり、先生に何か言った後すぐに智夜の方に走ってきた。 「智夜!待っていてくれたんだ」 先生は雅夜と智夜が話しているのを見るとすぐにどこかに行った。 雅夜は軽く笑顔で智夜に近づいたが、智夜は笑顔にはなれなかった。 寧ろ笑顔で近づいてくる雅夜に苛立っていて、つい普段より強い口調で話した。 「何で何にも言ってくれなかったの?雅夜あの人とそんなに仲がいいの?」 「智夜?」 「さっきだって、先生と二人で仲良く隣歩いていてさ。雰囲気とか良かったし、二人を見た後何か知らないけど段々イライラしてくるし…何かこんなの嫌だよ」 少し泣きそうな顔になり、最後の方はだんだんと声が小さくなって聞きにくくなっていたが雅夜には聞こえていた。 最初智夜が怒っている事に驚いていたが、それが”嫉妬”なのだと気づいた時は嬉しかったが雅夜は必死で平然とした顔を装った。 そして智夜は言いたい事を言い終えたのか少し落ち着いていた。 それを見計らって雅夜は話し始めた。 「前に先生が、さっきの先生からなんだけど“押して駄目なら引いてみろ”って助言されたから試したんだ。あの人結構気さくな人で話しやすかったんだ。最近お前、綾斗と一緒に居たり、複数でいることが多かったからさ俺と二人になるのが嫌なのかな〜って思って」 そういうと雅夜は眉を下げて智夜を見た。 すると智夜の顔が林檎のように赤くなっていった。 「それは…だって雅夜と二人っきりは恥ずかしくて、どうしたらいいのか分からないんだもん」 「そっか、一応意識はしているんだ、良かった」 雅夜は一歩智夜に近づき学校の中なのに智夜に抱きついた。 運が良く周りには誰も居なかった。 最初智夜はどうしたらいいのか困っていたが、すぐに雅夜の背中に手を置き抱きついた。 そして暫くたって雅夜が口を開いた。 「それにしても、智夜が先生に嫉妬かー。これは面白いね」 「…嫉妬?僕、嫉妬なんかしてないよ!」 雅夜が含み笑いしていると、智夜は必死で否定し、雅夜から体を離した。 その後、つかつかと何かブツブツ言いながら保健室の方に歩いていった。 智夜が行った後、「やっぱり智夜は可愛いな」と反省することなく一瞬だけ珍しく満面の笑みだった。 その笑顔を智夜は見逃していた―――。 |