『雅夜へ智夜1日借ります 』 いつもの様に寮と校舎の間の通路で智夜を待ってた。 なかなか時間になっても智夜が来ないからケータイを開いたらメールが2通来ていた。 一つは智夜から『今から教室でるね♪』って何とも智夜らしいメール。 もう一つは珍しく智夜の友達からだ。 「は…?なんだこれ…」 俺は頭の中が真っ白になっていた。 だっておかしいだろ? 智夜からは『今から教室でる』ってメールで智夜の友達からは『1日智夜借りる』って…。 「借りるって…智夜はモノじゃねぇよ!」 俺は矛盾した2通のメールを何度も見た。 「いたずら…?なのか?」 いろんな線を考えてみた、がやっぱりこれといってぴったりと納得のいく考えが浮かばなかった。 俺は何か無性にイライラして智夜を取り返しにいこうしていた。 * * * 智夜からの着信音だ。 『あ!もしもし?雅夜?今日ちょっと友達と…』 「今どこにいるんだ?」 『え?…駅前の店…』 「どこだ!」 『えっ、雅夜なんで怒って…もっと冷静になって?』 ちくしょう智夜のことになると俺は冷静じゃ居られないんだよ! 電話の向こうが騒がしかったせいか焦っていたためか、とにかく俺は智夜の話を全く聞けないでいた。 『雅夜、き、こえ、ない…』 「おい!?智夜!!」 雅夜の電話が突然切れたことに俺はさらに焦りを隠せなかった。 俺は智夜との電話の内容を思い出してみた。 「確か…駅前のって言ってたよな…」 急いで上着を持つと家を飛び出した。 少しでも早く恋人をこの手に抱き締めたかったから…。 予想していた通り駅前には人通りが凄かった。 この中から智夜を探し出す自信は正直あるとは言えない。 なんとなく駅前のカラオケBOXに足を運んだ。 「まさか…いないよな?」 ふと入り口から入ってすぐの部屋を見てみた。 「智夜!…なんで女の子と一緒に…」 俺はイライラとショックにもどかしさを感じ部屋のドアを思い切り開けた。 「ま!雅夜!」 「智夜!なにしてんだ!帰るぞ」 いきなり入ってきた智夜と同じ顔の俺をみて女の子達と智夜の友人は動揺していた。 「ちょ、ちょっと待ってよ雅夜」 「…」 俺は【嫉妬】と言う名の感情にただ足を動かされ黙って智夜の手をつかみ部屋から出た。 そのまま智夜と二人で駅から少し離れたとこにある公園に入った。 辺りは少し暗くなり始めたからかいつもいるちびっこ達の姿はない。 俺はそこで立ち止まりくるりと智夜と向き合った。 「で…何してたんだ」 「何、って…」 智夜は少しばつが悪そうに下ばかり見ていた。 なんか無性に腹がたっておもむろに智夜の顎をつかみムリヤリ俺の方を向かせた。 智夜はそれでも目をそらす。 智夜のそんな行動一つ一つが俺の中の嫉妬心にさらに火をつける。 もうこうなってしまったら自分が押さえられない。 何も言おうとしない智夜の唇をムリヤリ奪った。 智夜の顔は一瞬で赤く染まり。 目は突然のことに驚きを隠せないでいた。 智夜は俺の胸に手をあて突き放すように押した。 離れた唇からは名残おしそうに銀色の糸が繋がっていた。 しばらく俺達はそのままのでお互い見つめあったままだった。 しばらくの沈黙を破ったのは俺じゃなかった。 「…ごめん…」 今にも泣き出しそうな智夜はそういうとまた下を向いてしまった。 「いや…、俺もごめん…」 俺はこんな表情の智夜が見たかったんじゃない。 「なんで雅夜が謝るんだよ…悪いのは俺なのに…」 智夜はちらちらと俺を見てくる。 こんな状況なのに智夜が可愛いと想うのは俺がこいつに心底惚れている証拠だ。 「雅夜に心配かけたくなくて…でも友達がどうしても来てくれっていうから…」 智夜は半分泣きそうになりながら俺に一生懸命に伝えようとしてくる。 俺はいてもたってもいられず気がつけば智夜を自分の腕の中に入れていた。 腕の中の恋人は突然のことに頬を赤く染めていた…。 赤くなっている智夜のおでこやらほっぺたやら首筋に唇をそわせる。 《ずっとこんな時間が続けばいいのに…》 ただひたすら願ってみる。 智夜は赤くなったまま俺のキスを受け止めていた。 心配かけさせてしまったお詫びかのように…。 辺りはすでに暗くなり俺たちはお互いを確認できなくなるくらいまでずっと抱きあっていた。 この時智夜と俺のケータイが鳴ってたなんて聞いてないふりをしてたけどな…。 |