* ice *






夏休みが始まり、すぐに俺たちは寮を出て家に帰った。
まずは俺の家から、そして次に千里の家。
李音は今回、泉先生が寮に残るからと言って、一緒にお留守番だ。
久々の家は、いきなり帰ってきたせいで、両親共に会社に行っていて、とても静かだ。

「ただいまっと〜あっついなぁ〜」
「はぅ〜、流石に夏の暑さはこたえますねぇ〜…」
「俺の部屋、先に行ってて、皿とスプーン持ってくから」
「はい!」
「あ、クーラーも付けといてくれ」
「分かりました〜」

俺は千里を先に自分の部屋に行かせて、キッチンへと入る。
なんとも生活観のないというか、キレイすぎるキッチン。
昔からそうだった。
あまり使ってないというか、ここで食事をすることすら珍しかったからなぁ…。
まぁ、そんな干渉に浸ってる時間なんてのは極わずかで、すぐに皿とスプーンを持って自分の部屋へと向かった。
この皿とスプーンは、来る途中にコンビニで買ってきたかき氷用。

「お待たせ」
「ふぅ〜涼しい〜」
「ほら、カキ氷食おうぜ」
「ぁ、はい!」

俺の部屋に千里が居る。
そんなに久々ではないのに、すごく懐かしい感じがするのは何故だろう…。
前まではいつもこうやって一緒に居たんだけどな…。
なんて干渉に浸りながらも、クーラーの前で涼んでいる千里を呼んで、机の上に皿とスプーンを置く。
その皿の中に、千里がさっきかってきたカキ氷を入れて…にしてもいつも以上にニコニコしてるな…千里。

「さ、食べましょうっ」
「あぁ…」

俺が言葉を発した次の瞬間には、既に千里のスプーンは皿の中のカキ氷をすくっていた。
よっぽど食べたかったんだな、かき氷…。

「うぅ〜ん、おいし〜いv」
「そういえば、カキ氷なんて久しぶりだな、去年の夏祭り以来…とかか?」
「多分そんなところですね、コンビニで買って食べるかき氷、実ははじめてですから…」
「マジか…?」
「はい、マジです」

千里は妙なとこお坊ちゃんだから、未だに時々ビックリさせられる。
まぁ、ビックリするだけで、嫌とかそんなのはないんだけど…。
千里の皿の中のカキ氷が半分くらい消えかけたころ。

「いたっ…」
「ほら、そんなに急いで食べるから…」

千里が頭を抑えて痛いっていいだすもんんだから、ついついカワイイなんて思ってしまった。

「でも、幸夜は平気じゃないですか」
「まぁ、俺は昔からかき氷食って頭痛くなったことないからな…」
「ずるいです…」

千里は本当にちょっとした拗ね顔で、俺の方を見る。
その顔があまり見たことのない、妙にカワイイ顔で…俺はとりあえず固まってしまった。

「(ったく、どうしてやろうか…)」

なんて、考えているようで俺は案外手が早いらしい。
気付いたら、千里の額にキスをしていた。

「え、ちょ、幸夜!?」
「俺の前で、無防備にそんなにカワイイ顔してると、いつか突然食べちまうぞ?」
「ぇ、ぇえ!?」

その後はと言えば…。
俺が連絡していたのと、もう夕方近かったっていうのがあって、親がすぐに帰ってきて…。
俺と千里は二人とも、俺の親に一日中振り回されることになるのだった―――。


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