土曜。 俺たちは久々に二人で買い物に出かけた。 特にコレといって買いたいものがあったわけではないが、智夜が少し照れくさそうに俺を誘ってきたから…。 いや、例え照れくさそうにしていなくても、俺が智夜の誘いを断るはずはないのだが…! 買い物を済ませて、夕日を背に片道20分の道のりを、それこそ2倍くらいかけてゆっくり歩いていた時、智夜がいきなり立ち止まった。 「智夜?」 「ここ…」 疑問に思って声をかけると、智夜は公園を指差して、顔には柔らかい微笑を湛えていた。 「公園がどうかしたのか?」 「…昔さ、よくここで遊んだんだよね」 「ぁ、あぁ…」 「ね、ちょっと寄り道していかない?」 「え、うわっ!」 智夜は半ば強引に俺の手を引き、ブランコへと走っていく。 俺はといえば、その手の暖かさに少し浮かれていたが…そんなことはどうでもいい。 ブランコの前で手が離され、智夜はブランコに座って、ゆっくりとこぎ始めた。 俺は、隣のブランコに座る。 「…昔はさ、毎日のようにここで遊んでたんだよね…」 「あぁ…」 「砂でお城とか作ったりしてさ…」 「あぁ、あれ城だったのか?ただの山かと思ってた」 「ひっど〜、あれでもあの時は一生懸命だったんだよ〜!?」 「あはは、わりぃわりぃ」 その他愛無い会話が嬉しかった。 俺たちにしかできない、俺たちの為にある会話。 そして、智夜の楽しそうな顔。 俺は知らぬ間に、智夜の顔をジッと見つめていた。 「やっぱ、カワイイな…」 「え?」 「…いや、なんでもない」 「なんだよ〜」 ムッとした顔もカワイイな…。 なんて心の中で想いながら、智夜に向けて、智夜にしか見せない笑顔を見せる。 すると、智夜の顔が少し赤くなった気がした。 すぐにそっぽを向いてしまったのと、夕日の暖かい赤い色とで、赤いのは智夜の顔なのか、それとも夕日なのか、よく分からなかった。 「…雅夜の、アホ…」 「なんで?俺、何もしてないよ?」 「…そう、なんだけどさぁ…」 そっぽを向いたままの智夜に、おもいっきり優しい声でそう返答する。 智夜はあいまいな返事をすると、ゆっくりブランコを止めていつもの微笑でコチラに向いた。 「帰ろっか」 「あぁ」 公園を出るとき、智夜は昔のように名残惜しそうな顔をしていたので、俺が「またこような」と言ってやると、「うん!」と笑顔で返してきた。 昔のままの、変わらない笑顔で。 |